“背骨”の役割としくみ
いつもホームページをご覧いただき、ありがとうございます!
さて、ここ2回に亘り、
この「お役立ち情報」のページに、
『腰』に関しての内容を掲載しました。
スポーツをする人、
さらには広く、
年齢や性別に関係なく、
“人間”
にとって
腰は重要な役割を果たしています。
そして、
アスリートの卵たちである「育成年代の子どもたち」にとって、
腰を意識することは、
非常に大切なポイントになります。
その理由は、
ご理解をいただけるかと思います。
次は、
前回解説しました腰椎分離症が引き起すともいわれる
腰椎すべり症
に進んでいくことを予定していましたが、
ここで
腰を含めた『背骨』全体を
もう少し深掘りしたいと思います。
【背骨の役割】
腰は、次のような3つの重要な役割を担っています。
➀身体の支持…「脊椎」が上半身の重さを支え、その重さは「骨盤」を介して両足に伝わります。
背骨がぐらついてくると、『身体を支える』ことができなくなります。
②運動の中心…人間は、体を前後左右に曲げることができます。
前・後、左・右の動きなど、脊椎全体として多くの『運動機能』があります。
③脊髄や神経の保護…「脊椎」には、“脊髄”という神経の束が入っており、
抹消神経として体全体に伸びて「運動や知覚を伝達」しています。
大切な『脊髄を保護する』ために、
脊柱はトンネルのような構造をしています。(*脊柱管)
『支持』・『運動』・『神経の保護』が、“脊柱の重要な役割”です。
【脊柱(背骨)について】
脊柱は、「椎骨が(ついこつ)」が26個連結して成り立っています。
その内訳は・・・
上から
頸椎(7個)
胸椎(12個)
腰椎(5個)
になります。
英語の頭文字をとって、
頸椎(Cervical spine)はC1~C7、胸椎(Thoracic)はT1~T12、腰椎(Lumbar)はL1~L5、
と、それぞれ表現されます。
脊柱の下は、仙骨、尾骨に分かれおり、骨盤に連結しています。
また、
頸椎の上には頭蓋骨があり、
胸椎には肋骨が付属しています。
《椎間板(ついかんばん)》
そして、椎骨と椎骨との間には、「椎間板(ついかんばん)」が挟まっています。
椎骨の間は、軟骨でできた椎間板で隔てられており、
歩行やジャンプなどの動きで生じる衝撃を和らげる、“クッションの役目”をしています。
缶詰のカンのような形をした椎体と椎体の間に、柔らかいクッションが挟まれている・・・
その様子を想像してみてください。
クッションの綿に当たるものが「髄核」と呼ばれる柔らかいゲル状の組織で、
クッションのカバーに当たるものが「線維輪」と呼ばれる強固な線維状の組織です。
ちなみに、線維輪にほころびができて、中の髄核が飛び出してきたものが、
腰痛症として有名な「椎間板ヘルニア」です。
《椎間関節(ついかんかんせつ)》
一つ一つの椎骨の間を拡大しますと、下の3D画像のようなかたちになっています。
連結した椎骨と椎骨が関節のように動くことで、首や体(上体)の運動を可能にしています。
つまり、背骨は、指や膝など身体の他の関節と同様に、
骨どうしは、靭帯と関節でつながれて、
ずれたり、過剰に動いたり(*異常な動きや脱臼等)しない仕組みになっています。
また、椎間関節の向きによって、首や体の動く方向も決まっています。
普段は腰部の靱帯の働きを実感することがありませんが、
外傷などで靱帯が損傷してしまうと、骨がぐらぐらになり、
支持や運動などの機能に支障が出てきます。
また、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)といって、
脊柱管が生まれつき狭い場合か、加齢性に脊柱管が狭くなることによる腰痛症です。
主に起こる原因は加齢で、年齢を経るごとに背骨に負担がかかり椎間関節が変性し、
黄色靭帯が肥厚し、その結果、
神経を圧迫して、しびれや運動障害などの神経症状を引き起こすことになることがあります。
《椎骨と神経》
背骨には、タテに穴が開いていて、
脊髄が通っているひとつの椎骨は、
「椎体(ついたい)」と「椎弓(ついきゅう)」からできています。
椎弓には穴があいており、
各椎弓の穴が作る長いトンネル(脊柱管)の中に、
「硬膜」という袋に包まれた脊髄が通っています。
さらに、椎骨の隙間(椎間孔)からは、
脊髄から枝分かれした馬尾神経などの末梢神経が出ていて、
身体全体に伸びています。
つまり、脊髄は骨により完全に守られているわけです。
《脊髄》
脊髄は、脳と同様に、3層の組織(髄膜)で覆われています。
長くて傷つきやすい脊髄や髄膜は、脊椎の中央を通る「脊柱管の中」にあり、
椎骨によって、しっかりと保護されています。
脊髄の長さは約40~45cmあり、断面は直径が約1cmの楕円形をしています。
外側より丈夫な結合組織である硬膜、薄い半透明なくも膜及び軟膜と呼ばれる、
3層の膜に包まれています。
くも膜下腔は、脳脊髄液で満たされています。
また上図のように、
脊髄からは、椎骨と椎骨の間を通り、“脊髄神経”が出ています。
その数は、『31対』にもなります。
脊髄は、脳と同じように、*「灰白質」と「白質」で構成されています。
“蝶”のような形をした脊髄の中心部には、灰白質があります。
この角と呼ばれる“蝶の羽”のような部分・・・
前部の角には、脳や脊髄からの情報を筋肉に伝えて運動を起こさせる『運動神経細胞』が
集まっています。
後側の角には、身体の他の部分からの感覚情報を脊髄経由で脳に伝える『感覚神経細胞』が
集まっています。
一方、周囲の白質には、
身体の他の部分からの感覚情報を脳へ運ぶ経路(上行路)と、
脳から出されたインパルスを筋肉へ運ぶ経路(下行路)、
「神経線維の束」が通っています。
それぞれの神経は、2本の短い枝(神経根)に分かれており、
1本は、脊髄の前(運動神経根:前根)に、
もう1本は、脊髄の後ろ(感覚神経根:後根)に位置します。
*「灰白質(かいはくしつ)」とは、中枢神経系の神経組織の内、
ニューロン(神経細胞)の細胞体が集まる領域を指します。
中枢神経組織の断面を肉眼的に観察した際、白質よりも色が“濃く灰色”がかって見えることにより、
その名がつけられています。
これに対し、神経細胞体がなく、有髄神経線維ばかりの部位を「白質(はくしつ)」と呼びます。
◎運動神経根は、脳と脊髄からの命令を身体の他の部分、特に骨格筋へ伝えます。[前根]
◎感覚神経根は、身体の他の部分の情報を脳へ伝えています。[後根]
脊髄は、脊椎の下方“約4分の3の位置”で終わりますが、
そこから下へ、一束の神経が伸びています。
この神経の束は、馬の尾に似た形をしているため“馬尾”と呼ばれており、
下肢へ行き来する神経インパルスを伝えます。
【おわりに】
脊椎は、
本来“S字”にカーブしています。
◎頸椎は前彎している(前に出っ張る)
◎胸椎は後彎している(後ろに出っ張る)
◎腰椎は前彎している(前に出っ張る)
ことが『正常』なのです。
脊椎がS字にカーブしていることにより、
姿勢のバランスを保ったり、
身体を動かしたり、
運動による衝撃や筋肉の負荷を緩和したりすることができます。
また脊椎のしなやかなS字のカーブや直立姿勢は、
腹筋や背筋などの多くの筋肉や靭帯によって支えられています。
「腰は体の要」といわれますが、
背骨は長短の筋肉により支えられていますが、
その中でも特に、『脊柱起立筋』と呼ばれる筋群の働きは重要です。
近年、MRIなどの画像診断が容易になり、
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄による神経の障害が画像で説明ができるようになってきたことにより、
椎間板や神経が注目される傾向にあります。
しかし・・・
身体を支え、姿勢をつくり、運動の際にカギとなる“筋肉の働き”の重要性を
忘れてはいけません。
背骨の不安定性は、背骨を支える『靭帯や筋肉の“機能不全”』も根底にあります。
つまり、身体を支える筋肉が収縮も弛緩も自由にできにくい状態にありますので、
このことだけでも背骨の安定性という面からいえば、とても不利な状態です。
そのため、
姿勢や動きの元となる“身体を支える筋肉”への意識は、
外すことができない大きなポイントとなります。
.
まず、
身体の要(かなめ)である、
『腰、背骨に関する基礎知識を持つ』ことが大切です。
そして、
“姿勢や動作”に関係する筋肉への「理解、意識づけ」と、
実際の、
“体幹トレーニング”を含めた改善に向けた「行動」が
重要になってきます。