ひざの痛み -オスグッド・シュラッター病-
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サッカーをする成長期の子どもたちが、ある年齢に差し掛かりますと、
「ひざが痛い」
と訴える子が出てきます。
その子の膝を注意深く見ていますと・・・
膝の下辺りが、少し出っ張っているのが分かります。
そこで、病院や整形外科や接骨院に掛かりますと、
『オスグッド』
と聞いたことがない、不思議な病名を告げられます。
その後(多くの場合)は、
「原因は“成長痛”または“使いすぎ”」と診断されます。
そして、一般的な対処としては、シップや、電気治療で
「とりあえず安静にして、様子を見てください」の一言で、終わるケースが多いです。
つまり・・・スポーツは一定の期間禁止で、「休んで治しなさい」ということです。
(残念ながら、休んで治るのであれば・・・専門家は必要のないことになります)
もし「成長痛」や「使いすぎ」だけが原因ならば、
同じ内容のトレーニングを行っている同年代のチームメイトも、
『全員がオスグッドになってしまう』はずです。
一方で、実際のところでは「オスグッドになる子」と「ならない子」がいます。
では、このオスグッドとは一体何なのか・・・?
今回は、その原因などを探りました。
【オスグッドとは?】
一般的には、「オスグッド」と略されますが、
正式名称は、オスグッド・シュラッター病(症候群)といいます。
(*英:Osgood-Schlatter disease、独:Osgood-Schlatter-Krankheit)
1903年に、ボストンの整形外科医ロバート・ベイリー・オスグッド氏と、
チューリッヒの外科医カール・シュラッター氏が別々に症例を確認、発表したため、
この病名になっています。
スポーツでジャンプや屈伸を行うことにより、大きな衝撃が膝(◎膝近くの脛骨)に生じ、
脛骨粗面付近に炎症が生じるのが原因です。
骨端軟骨の中には、骨端核と呼ばれる“骨の芯”があり、
その部位に繰り返し牽引力(*引っ張る力)がかかることに起因するとされています。
また、この骨端軟骨は縦方向に成長し、根元から骨化(硬骨になる)することで、
身長が伸びたり、手足が長くなっていくことから、
骨端軟骨が成長する、「主に10 から15歳の活発な発育期」の男子に多く発生し、
運動時に症状が強く現れます。
これが“成長痛”といわれる由縁でもあります。
したがって、オスグッド病は、身体の成長が著しい時期に、
バスケットボール・サッカー・バレーボールなど、
「跳ぶ」、「蹴る」、「膝を強く曲げ伸ばしする」ことを行うスポーツで多く発症します。
実際に現在、スペインのリーガ・エスパニョーラのプリメーラ・ディビシオンのセビージャFCで
活躍中の、日本代表の清武弘嗣 選手も「中学の時期にオスグッド」に悩まされたそうです。
ただ、オスグッドは、明らかに膝を使うスポーツだけではなく、
さらに、成長期に限ったものでもありません。
例えば、プロ野球でも、このオスグッドの症状で手術に踏み切ったアスリートもいます。
広島カープの岩本貴裕外野手⑩は、2011年にオスグッドが原因で右膝を手術しました。
岩本選手は、開幕当初から同箇所の慢性的な痛みを抱えており、
この年の9月に広島県内の病院でメスを入れました。
3月中旬頃から膝関節の慢性的な痛みが、全力でのプレーに支障をきたし、
「まともに練習できないなら早く手術をした方がいい」ということで、
骨端部分を取り除く手術に踏み切ったそうです。
【オスグッドの症状】
おおよそ10~15歳にかけて、身長が大きく伸びる発育期・成長期に、
膝の脛骨結節(お皿の下の骨)が出っ張り、痛みが生じます。
重症になれば、腫れて熱を持ったり、普通通りに歩けなかったり走れなかったり、
さらには、出っ張りの部分に当たると激痛が走り、正座ができないなどのケースもあります。
ある程度の休養を与えると、痛みが引くこともありますが、
多くの場合は痛みが再発してしまいます。
【オスグッドの原因】
膝を曲げたり伸ばしたり膝の屈曲・伸展を繰り返し反復することで、
大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)が、膝蓋腱付着部を介して脛骨結節を引っ張るために、
過剰な負荷がかかり、成長軟骨部が剥離することで痛みが出ます。
特に、成長期の子どもは身長が伸びる関係で、骨には負荷がかかっており、
そこに膝の屈曲・伸展の繰り返し動作が、さらに負荷を増して痛みを生じさせます。
●主な要因
①太腿の前の筋肉の硬さ
②日常の環境
③ケガをしやすい身体の動かし方の問題
④トレーニング方法の問題
◆オスグッドになりやすい動作や運動
下図のような、“膝を大きく動かす動作”がオスグッドを引き起こしやすい動きです。
「この痛みは何なの?」
「なんで膝の骨が出っぱるの?」
「いつまでこの痛みと付き合っていくの?」
痛みが出始めた当初は、不安はつきまといます。
オスグッドのさらに詳しい原因と対処方法つきましては、
『非常に重要なポイント』ですので、このたびで全て説明することは避け、
次回に回したいと思います。
オスグッドの改善には、以下のことに留意する必要があります
◎大腿部の筋の緊張を解き、柔軟性を高める
◎成長期が原因(一過性のもの)とはいえない ⇒根本からの改善が必要
◎早期の発見、早期の対処の2点がなされれば、ほぼ確実に完治可能
㊟但し、脛骨粗面が大きく剥離してしまい、その剥離した骨が遊離した状態になった場合のみ、
摘出手術を行う事もありますので、注意も必要です。
オスグッドが成長期の子どもに起こりやすい理由は、
筋肉がついている膝下の骨の出っぱり部分が「軟骨」でできているためです。
強い引っぱりが加わると痛みやすく、その部位は(軟らかいため)剥がれやすいのです。
このためオスグッドは「成長痛」と診断され
「成長が止まるまで治らない」と言われることも多いのですが・・・
成長が止まるまで、ひたすら痛みに耐え、
諸々の方法でごまかすことは、将来的にも大変危険なことです。
また一方で、“病”と書きますが、慌てるような大きな病気でもありません。
時間をかけて、確実に対処すれば、痛みも膝の出っ張りも治まってきます。
落ち着いて適切な対応を心がけましょう。